SYNERGY ESSAY シナジーエッセー 上野圭一さん
月曜日は代替医療のオピニオンリーダー上野圭一さんのシナジーエッセー。専門家の視点から、健康、医療、幸福について分かりやすくお伝えします。
2010年8月16日(Mon)
「わたしたちと医療」その幸せな関係をみつける 第二九回
倉本聡脚本の終戦記念日ドラマ『歸国』(TBS)を見ました。2010年8月15日未明、
人影のない東京駅に南太平洋の戦地から英霊(戦死者の霊)たちが集まり、それぞれ縁の
ある場所を訪れるという設定のドラマです。
英霊のひとり(ビートたけし)が訪れたのは、ある大病院。ただひとりの肉親で、高齢に
なった妹が生命維持装置につながれ、昏睡状態のまま横たわっている病室です。本来なら
死んでいるはずなのに機械によって肉体だけが生かされている。そのことを理解した英霊
は「なんて残酷なことをしやがるんだ」と激怒します。そのとき、小学生の女の子が病室
に忍びこんできます。女の子は、まだ意識があった時期の英霊の妹と仲がよく、「もし私
が生命維持装置につながれるようなことになったらスイッチを切ってね。約束よ」「わか
った。切ってあげる」と言い交わしていたのです。
重病で入院している女の子は「私ももうすぐ天国に行くわ。天国の入口で待っててね」
と言いながらスイッチを切り、モニターで心臓の停止を確認して病室を出ていきます。物
陰からそれを見ていた英霊は女の子の後ろ姿に向かって思わず敬礼し、「お嬢ちゃん、あ
りがとう」と、深々と頭をさげました。
英霊の妹の息子は、母親を一度も見舞うことなく、何年も治療費だけを払いつづけてい
る大学教授で、政府の経済顧問をしている有名人という設定でしたが、この設定にはさほ
ど無理がないように感じられました。全国の病院を調べれば、似たようなケースがたくさ
んあるはずです。「消えた高齢者」はじつは「消された高齢者」でもあり、病院で生命維
持装置につながれた高齢者の少なからぬ数が、無理解な家族のエゴイズムの犠牲になって
いるような気がします。「前期」高齢者の私にとってもひとごとではありません。
2010年8月16日(Mon)